企業における労務の役割、面白さ、具体的な仕事内容を紹介

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企業の管理部門を目指す方や労務に興味のある方は、こんな悩みはありませんか?

✔ 企業における労務の役割が分からない
✔ 労務の具体的な仕事内容が分からない
✔ 労務に求められるスキルが知りたい

そこで本記事は、企業での労務の全体像を紹介!

記事を読むメリットは次のとおりです。

〇 企業における労務の役割がつかめる
〇 労務の具体的な仕事内容が分かる
〇 労務に求められるスキルが分かる

具体的には、企業における労務の役割魅力や面白さ、具体的な仕事内容と必要なスキルについて解説します。

10年超の実務経験を元にした内容なので、労務に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

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労務とは

労務とは、企業における労働に付随する関連業務全般を指します。

具体的には、勤怠管理・給与計算・社会保険等の事務処理や管理業務が中心です。

その他、規則規程類の管理や職場の安全衛生管理など「人」に関わるエキスパートとして従業員をサポートし、企業活動を円滑に進めることを目的としています。

以下、企業における労務の役割、魅力や面白さ、人事や総務との違いについて解説します。

労務の役割

労務の役割を一言でいえば、「従業員が安心して働ける組織づくり」です。

さわ
さわ

法律に基づいて職場のルールや環境を構築しています。

・就業規則や労使協定の管理運用
・従業員の勤怠管理や給与計算
・安全衛生管理体制の構築…etc.

例えば、法改正に伴って就業規則を改訂したり、時間外労働に欠かせない36協定を締結するなど、規則規程全般を管理・運用しています。

サービス残業や過重労働を防止するため労働時間を管理したり、未払賃金が発生しないよう正確な給与計算を行うことも業務の範疇。

その他、職場巡視、従業員の健康診断やストレスチェック、産業医面談の実施など職場の安全衛生管理体制の構築も担っています。

上記の業務を中心に、労務は「従業員が安心して働ける組織づくり」を主な役割としています。

労務の魅力や面白さ

企業における労務の魅力や面白さは次のとおり。

✔ 働く上で必要な知識が身に付く
✔ 経営的なポジションで活躍できる
✔ 従業員を支えるやりがいを感じられる

労務の魅力や面白さ一つ目は、働く上で役立つ知識が身に付くことです。

労務部門では、従業員の入社~退職にいたるまでの様々な手続きを担当します。

例えば、入社に伴う雇用保険・健康保険・厚生年金保険への加入や毎月の給与計算、年末調整など社会人生活に欠かせないものばかり…

労務に携わることで、社会人として働く上で必要な幅広い知識を身に付けることができます。

労務の魅力や面白さ二つ目は、経営的なポジションで活躍できることです。

労務部門では、経営層と一体となって就業規則や労使協定、人事制度などの管理運用を行います。

例えば、法改正に伴って就業規則や36協定を変更したり、社会情勢に合わせて人事制度を見直すなど、全社的に影響のあるタスクを扱っています。

制度設計や変更においては、経営層へのプレゼンや度重なる協議労働組合や従業員代表への説明と同意の取り付けなど、上流部分の業務が中心!

組織を動かすにあたり、経営的なポジションで活躍することができます。

労務の魅力や面白さ三つ目は、従業員を支えるやりがいを感じられることです。

労務部門は、制度設計以外でも従業員をサポートする場面が沢山あります。

例えば、従業員の勤怠管理健康診断やストレスチェックの実施各種相談対応など…

また、結婚・出産・引越しなどに伴う福利厚生の手続きを通じて、従業員のライフイベントに寄り添う場面も出てきます。

法律やルールを遵守すべく管理するだけでなく、企業という枠を超えて従業員の人生を支えられるやりがいを感じられるのも労務の魅力です。

人事や総務との違い

企業における労務・人事・総務の違いを「役割」で表すと次のようになります。

<各部門の主な役割>
労務:従業員の労働環境の整備
人事:従業員の採用や能力開発
総務:組織運営の円滑化

労務の主な役割は、国や会社などが掲げた方針に従って、従業員がより適した労働を行えるように労働環境を整備することです。

労務の具体的な業務内容は次のとおり。

<労務の具体的な業務内容>
・規則規程類の管理運用
・勤怠管理
・給与計算および社会保険手続き
・年末調整
・労働契約管理
・安全衛生管理
・労務トラブル対応

労務は、法律に基づく業務が大半を占めており、高い専門性が求められる部門です。

但し、企業規模により、採用や人材開発を担当する「人事」や事務間接作業を担当する「総務」が「労務」を兼ねるケースもあります。

一方で、人事の主な役割は、企業が掲げる戦略や方針に従い人材の採用~配置、個々の能力開発や教育を行い、組織の生産性向上を図ることです。

人事の具体的な業務内容は次のとおり。

<人事の具体的な業務内容>
・人材採用
・教育や研修体制の整備
・OJTの実施
・人材配置や異動の辞令
・人事考課制度の管理運用


人材の採用や教育・研修を通じた能力開発、配置や評価等、「人」を中心とした業務で構成されている点が労務との違いになります。

そのほか、総務の主な役割は、事業活動が円滑に進むよう他が担当しない業務を担うことです。

総務の具体的な業務内容は次のとおり。

<総務の具体的な業務内容>
・備品の発注や設備の保守管理
・事務所や会議室などの施設管理
・社外からの問合せ窓口
・郵送物や接待交際関連の対応
・社内行事の企画運営…etc.


労務や人事のような明確なミッションをもたず、他部門では対応できない業務を一手に引き受けるのが総務の役割です。

例えば、名刺や印章などの消耗品の発注や社用車の保守管理、社内の電話やネットワークの整備、事務所や会議室の施設管理など業務範囲は多岐に渡ります。

また、社外の問合せを最初に受ける「一次窓口」を担うのも総務の役割!

その他、会社宛の郵便物受取や取引先の接待交際関連業務(お礼状、年賀状、お中元・お歳暮)、式典などの社内行事にも対応します。

なお、企業規模やアウトソーシング状況により、総務の役割を労務や人事が担う場合もあります。

労務の仕事内容

企業における労務部門の仕事は、主に次の7つに分けることができます。

規則・規程の管理運用

労務の主な仕事一つ目は、規則・規程の管理運用です。

労務部門では、就業規則をはじめ労使協定や企業独自の内規など、規則・規程類の全般を管理しています。

<労務が管理運用する規則・規程類>
・就業規則
・労使協定
 └36協定、変形労働協定…etc.
・内規
 └文書管理規程、情報管理規程…etc.

就業規則や労使協定は、法改正や社会情勢の変化に伴い改訂や一部変更が発生するなど、こまめなメンテナンスが必要な業務です。

特に、時間外労働を行わせる上で必須の36協定は定期的な見直しが必要で、厚労省の手引きでも「有効期間を1年とすることが望ましい」と明記

そのため、大半の企業では有効期間を1年としており、毎年、延長時間や特別条項の有無(有りの場合は、特別延長時間)を見直しています。

なお、就業規則の改訂や労使協定の締結における労組または従業員代表の同意取り付け、労基署への届出も労務部門が対応。

その他、企業独自に定める各種内規の管理運用も労務の業務範疇です。

<内規とは>
企業や行政機関等の組織内部における規則

具体的には、企業内の業務を円滑に進めるために定められた決まりごとやルールを指します。

さわ
さわ

法的拘束力はないものの、適正な企業運営と法令違反防止のため厳格な運用が求められます。

明文化された規程は企業によって異なりますが、上記のほか、人事評価規程・育児介護休業規程・副業・兼業規程など、様々な規程が存在します。

勤怠管理

労務の主な仕事二つ目は、勤怠管理です。

<勤怠管理とは>
従業員の就業状況を雇用主が正しく把握し管理すること

労務部門が従業員の勤怠を管理する主な理由は、給与計算の業務において全従業員の勤怠データを集約しているから。

具体的には、日々の出退勤時刻をはじめ、時間外労働時間、休日出勤や欠勤の日数、有給休暇の取得状況など、さまざまなデータを収集・チェックしています。

<労務がチェックする勤怠データの例>
・申請時間と実労働時間に乖離がないか
・残業や休日出勤を正しく申請しているか
・振替休日や代休を取得しているか
・36違反となる過重労働をしていないか
・年休を適切に取得しているか…etc.

昨今では、長時間労働の抑制や過労死の防止など労働者保護の観点から厚労者が労働時間の削減を積極的に推進

2019年の法改正においては、時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定されるなど、大幅に規制が強化されました。

また、コロナ禍に伴うテレワーク普及も相まって勤怠管理は企業における喫緊の課題に…

長時間労働の抑制をはじめ、オフィス以外で働く従業員をどのように管理していくか、労務部門における勤怠管理の重要性は高まっています。

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給与計算・年末調整

労務の主な仕事三つ目は、給与計算と年末調整です。

労務部門では、全従業員の勤怠データをもとに、毎月の給与計算を行っています。

給与計算においては、基本給や諸手当など従業員に支払う給与額だけでなく、国に納める保険料や税金などの控除額も算出!

<給与計算における法定控除>
・雇用保険料
・健康保険料
・厚生年金保険料
・介護保険料(40歳以上が対象)
・住民税
・所得税

上記以外にも、事業主と労働組合(または過半数代表)が交わす労使協定に基づいた項目(協定控除)についても給与から天引きします。

<給与計算における協定控除(例)>
・寮費
・社宅費
・旅行積立金
・社内預託
・労働組合費…etc.
※協定控除の項目は会社によって異なる

なお、法定控除で給与から天引きした保険料は、労働保険料(雇用保険)が年1回、社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険)が毎月、労働局と日本年金機構へそれぞれ納付します。

住民税については、労務部門にて前1年間の給与情報を記載した「給与支払報告書」を作成して、1月に自治体へ提出!

提出した情報をもとに、自治体が住民税の税額を計算する流れとなっています。

その他、年に一度の年末調整業務についても労務部門が担当します。

年末調整とは給与の源泉徴収税を年に1回再計算し、還付または徴収の清算を行う制度。

年間給与所得が2000万円を超える者や災害減免法によって所得税の徴収猶予を受けている者などを除き、雇用形態にかかわらず全ての従業員が対象となります。

毎年11月〜翌1月にかけて作業が発生し、以下の手続きを3ヶ月程かけて実施します。

①申告書の提出依頼・確認修正
②年調年税額の計算・還付徴収
③法定調書の提出・納付

年末調整は、給与計算の付帯業務と捉えられがちですが、会社(給与等の支払者)の義務として、所得税法に定められた重要な業務。

季節的業務ですが作業ボリュームが多く、罰則の定めもあるため、給与計算と同様に高い専門性が求められます

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公的保険の手続き

労務の主な仕事四つ目は、公的保険の手続きです。

労務部門では、従業員の入退社やライフイベントに伴い公的保険に関する手続きを行っています。

<労務が取り扱う公的保険>
・労災保険
・雇用保険
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険

例えば、従業員が業務上で怪我をした場合には、治療にあたって労災保険の給付を申請します。

従業員の入退社にあたっては、雇用保険の取得・喪失(離職票の発行)、健康保険と厚生年金保険の加入・脱退の手続きにも対応。

また、出産育児一時金や育児休業給付金の申請、扶養家族に変更があった場合の被扶養者(異動)届など、ライフイベントに応じた様々な手続きを行っています。

なお、上記の届出先は、労災保険が労基署、雇用保険がハローワーク、健康保険と厚生年金保険は年金事務所、介護保険は自治体とバラバラ。

各保険ごとに申請要件・必要書類・手続き方法も異なるなど、公的保険に関する幅広い専門知識が求められる仕事です。

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労働契約の管理

労務の主な仕事五つ目は、労働契約の管理です。

労務部門では、正社員・嘱託・契約・パート・アルバイトなどの雇用形態を問わず、従業員全般の労働契約を管理しています。

<労働契約に関する各種手続き>
・労働条件通知書の交付
・雇用契約書の取り交わし
・雇用契約書の保管
・契約更新の意思確認
・期間満了通知書の交付…etc.

例えば、新たに労働契約を締結する者には、雇用形態を問わず、労働条件通知書を交付します。

その後、労働者と雇用契約書を取り交わし、原本を受け取って保管するまでが一連の流れです。

契約後は、人事データベースに個々の契約内容や契約終了日などの情報を反映。

嘱託・契約・パートなどの非正規労働者は、契約期間が満了する前に更新の意思を確認し、希望に応じて契約更新または終了の手続きを行います。

なお、非正規労働者の労働契約は、契約の締結日と満了日が労働者ごとに異なるため、管理が煩雑になりがち…

非正規労働者の割合が多い企業は、通年を通して契約更改を行うケースもあるなど、労務の中でもボリュームの大きな仕事といえます。

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安全衛生管理

労務の主な仕事六つ目は、安全衛生管理です。

労務部門では、労働安全衛生法に基づき、従業員の健康面・精神面の衛生管理を行っています。

<安全衛生管理の業務例>
・職場巡視
・定期健康診断
・ストレスチェック
・産業医面談の実施
・労基署への報告…etc.

例えば、安全衛生管理の代表的な業務として挙げられるのが「職場巡視」です。

さわ
さわ

職場における労働衛生面の問題を早期発見することを目的としています。

職場巡視の具体的なチェック項目は次のとおり。

<職場巡視の項目例>
・室内の照明、換気、気温、湿度が適切か
・職場の清掃が行き届いているか
・トイレや洗面所が清潔に保たれているか
・地震や防災対策が講じられているか
・安全衛生保護具を適切に保管しているか
※チェック項目は企業によって異なる

なお、常時50名以上の労働者がいる事業場では、労働安全衛生規則により1週間に1回以上「衛生管理者」による職場巡視が義務付けられています。

「衛生管理者」は労務部門から選任するケースが多いため、労務担当者が職場巡視を行うパターンが一般的です。

その他、従業員への定期健康診断やストレスチェックの実施も安全衛生管理の代表的な業務です。

健康診断は、労働安全衛生法に基づき、従業員の雇入れ時のほか、年1回以上定期的に行なう必要があります。

また、2015年12月からは、常用雇用者50人以上の事業者に対して、職業性ストレスチェック実施が義務化。

メンタルヘルスの重要性が取り上げられるなど、ストレスチェックのシステム導入や産業医面談の実施も、労務の重要な役割となっています。

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労務トラブル対応

労務の主な仕事七つ目は、労務トラブル対応です。

労務部門では、職場で起こり得るさまざまな労務トラブルへの対応を行っています。

<労務トラブルの例>
・上司からのパワハラやセクハラ
・同僚からのいじめ
・長時間労働の常態化
・サービス残業の横行
・従業員の安否確認…etc.

労務トラブルでよくある事例は、上司のパワハラやセクハラです。

ホットラインを通じて被害者から労務部門に通報が入ることで発覚するケースが大半を占めます。

さわ
さわ

同僚からのいじめや職場内のトラブル(従業員同士のケンカや金銭トラブルなど)も同様。

通報を受けた後、加害者および被害者との面談や周囲へのヒアリングを実施します。

事実認定した場合は、加害者を社内の懲罰規定にかけるケースもあるため、慎重な対応および調査が求められます。

また、長時間労働やサービス残業に対する従業員からの相談や改善要求に対応したりもします。

その際は、業務分担の見直しや適正な労働時間を申告するよう管理職者へ指導を実施。

時には、全社的な対応(再発防止教育実施や未払賃金の清算など)に発展するケースもあります。

そのほか、無断欠勤などに伴う従業員の安否確認なども業務の範疇。

状況によって、本人の自宅を訪問したり、大家や警察と連携するケースも出てきます。

いずれの事案も突発的に発生するため、他業務との優先順位付けや臨機応変な対応が求められます

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まとめ

以上、労務の役割や魅力・面白さ、人事や総務との違い、仕事内容について解説しました。

労務は、「従業員が安心して働ける組織づくり」を担う管理部門の中核的な存在です。

人の役に立つ仕事がしたい職場環境を整備する仕事に就きたい、という方におすすめします。

別の記事で「労務に向いている人の特徴」「労務に求められる基礎知識」を紹介しているので、気になる方はこちらもどうぞ。

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